抜髄とは
歯の中には神経があり、温かい、冷たいといった温度感覚を伝えます。また、神経と同時に血管もあり、これによって歯の中にある細胞に栄養を与え、細菌の歯髄への侵入を防ぎます。ですが、細菌によって歯髄が炎症を起こしてしまうと、強い痛みを感じます。
その後、神経は死んでしまいます。この時行うべき治療が「抜髄」で、その目的は以下の3つです。
- 歯髄が炎症を起こしたことによる痛みを取り除くこと
- 歯の内部に侵入した細菌を取り除くこと
- 歯の内部に細菌が入ってこれないようにすること
抜髄の必要性
抜髄を行わなければ、2つの問題が起こると考えられます。
- 痛みが改善しない
- 歯の中に細菌が繁殖することで、根の先の骨が溶けてしまう
抜髄で大事なことは、細菌が歯の中に入らないようにし、入ってしまった細菌を出来るだけ除去し、細菌が治療後も入らないようにすることです。適切に抜髄を行い、その後の被せ物を行うことで、歯は長持ちすることが過去の研究からも明らかになっています。
抜髄で治せない場合
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歯の中の触れない部分や、歯の根の外に細菌が侵入している場合
歯の中はとても複雑で、触れないくらい細い管や、管と管を結ぶ小道が多くあります。通常の治療では、約35%の触り残しがあると報告されています。そのため、薬剤やその他の手段を使って、触り残した部分の細菌を除去するように努めます。ですが、それでも細菌が多く残ってしまう場合もあります。
また、根の先から歯茎を通じて膿が出ていることがあります。こういった場合、ある程度の割合で細菌が根の外側にいるという報告があります。上記の2つの場合、抜髄だけでは症状が改善しないため、歯根端切除術や意図的再植術といった治療が必要となります。
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歯の根が割れている場合
咬む力が強い場合、歯が割れていることがあります。特に割れている範囲が広ければ、残すことが困難となり、歯を抜く必要があります。
割れている範囲が狭ければ、歯を残せる可能性があります。ですが、残る可能性は通常よりも低くなってしまうため、必ずしっかりと説明を受ける必要があります。
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歯以外の部分が原因で痛みを感じている場合
歯の周りには多くの組織、たとえば顔の筋肉や神経、更には脳があります。「歯が痛い」と思ったけれども、「実際に痛い原因は顔の筋肉だった」なんてことも多くあります。
もちろん、原因は歯ではないので、抜髄で痛みは改善しません。こういった痛みは非歯原性疼痛と言われ、専門の先生がいらっしゃいます。当院では、痛みをしっかりと診断し、専門医と連携を取ることで、痛みの改善に努めます。
抜髄後の痛みについて
治療後に歯に物が当たると痛かったり、咬むときに痛いことがあります。歯の根の周りには歯根膜という薄いクッションがあります。治療中に歯根膜に器具や薬液などが一部出て、炎症を引き起こす可能性があり、それによって咬んだときに痛みを感じることがあります。
治療後2、3日は咬んだときの痛みを感じることがあるため、痛み止めを飲んで過ごされてください。数日で痛みが改善してきます。