自家歯牙移植術とは
自家歯牙移植は、患者さん自身の不要な歯(咬んでいない親知らずなど) を別の場所へ移植することで、歯の機能を回復させる治療方法です。
自家歯牙移植が必要な理由
歯を失った場合、通常はブリッジやインプラント、入れ歯などで補いますが、自家歯牙移植はこれらの治療に代わる選択肢です。特に、隣接する歯を削りたくない、または自分の歯で代用したいという場合に適しています。また、インプラントは歯を失ったときの最終手段であり、それを先送りに出来る、という特徴もあります。
自家歯牙移植の適応となるケース
自家歯牙移植が適応となるケースは以下の通りです。
- 使用されていない親知らずや、歯列に影響しない歯がある場合
- 抜歯が必要な部位があり、インプラントや入れ歯を避けたい場合
- 若年層で歯の成長を考慮した治療が必要な場合
自家歯牙移植の流れ
STEP 01.
移植する歯の選定と準備
まず、移植に適した歯を選びます。通常は親知らずなどの使用していない歯が選ばれます。その後、CTで移植予定部位の状態を確認し、適合するかを診断します。
STEP 02.
移植部位の準備
移植先の歯牙を抜歯し、同部の歯槽骨を整え、移植する歯が収まるように調整します。この時、CTデータから作成したレプリカを使って、適合するかどうかを先に確認します。
STEP 03.
歯の抜歯
局所麻酔を使用して、移植する歯を抜歯します。
STEP 04.
歯の移植
抜歯した歯を移植部位に挿入し、前述のレプリカを元に検討した位置や角度で調整します。移植後は、歯を安定させるため、固定や糸で結紮します。
STEP 05.
経過観察
移植後の歯が周囲の骨と結合するのを待ちながら、経過観察を行います。通常、約1ヶ月でほぼ動揺がなくなり、抜髄を行います。
その後、歯が動揺しなくなるまで約3ヶ月かかりますが、その際に仮歯をセットし、術後1年で問題を認めなければ、最終的な被せ物をセットしてもらいます。
自家歯牙移植のメリット
歯根膜の保持
移植された歯は歯根膜を持つため、インプラントと異なり自然な咬合機能を維持できます。また、移植後に矯正治療も行うことが出来ます。
自家歯牙移植のリスクと注意点
- 自家歯牙移植にはリスクも伴います。
- 例えば、移植後の歯が骨と生着せず、再び抜歯が必要になる場合があります。
- 移植する歯や移植部位の状態によっては感染のリスクがあり、治癒が遅れることもあります。
- 術後の痛みや腫れも生じることがあるため、治療後の口腔ケアが重要です。
自家歯牙移植後のメンテナンス
自家歯牙移植後は、移植された歯が正常に機能しているかを確認するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。特に、移植後の1年程度は骨との結合が安定するまで経過観察が必要です。また、移植部位を清潔に保つため、日々の口腔ケアも欠かさず行うことが求められます。
自家歯牙移植の今後の可能性
近年では、移植の成功率を高めるための技術が進歩しており、自家歯牙移植の成功率も向上しています。特に、3D技術による術前診断や、再生材料を用いた治療が導入され、より効果的な治療が可能になりつつあります。歯科医療が進化する中で、より多くの患者さんに自家歯牙移植の選択肢が提供されるようになることが期待されています。